或る世界

泡の袖口

黒いストローを囲む淡い泡の表面

黒いストローを指でつまみ、一センチほど引き上げた。液面に触れていたところから、淡い泡が輪になってついてくる。黒い管の途中に白い袖口ができ、さっきまで表面だった高さをそのまま示していた。

さらに上げると、輪は管を滑らず、厚みだけを失っていく。下の液面ではストローの跡がもう閉じているのに、管の外側には境目が残った。水位を示す線ではない。液面から切り離され、泡だけで持ち運ばれている線だ。

ストローを静かに下ろした。袖口の下端が液面へ触れると、白い輪は横へほどける。ただし全部は表面へ戻らず、管と飲み物の間に透明な筋が一本残った。そこだけ空気が細く押し込まれている。

もう少し沈めると、筋の先がちぎれて小さな気泡になった。気泡は黒い管に沿って上がり、途中で一度、泡の残りへ引っ掛かる。指を離すと、丸い粒だけが先へ抜けた。ストローを傾けても、その粒はもう輪には広がらない。持ち上げた袖口は元の輪へ戻らず、管の外側を通って、一粒の空気として液面へ浮かび出る。