左目の仮の枝

左目を閉じ、幹の途中へ人差し指を重ねた。そこから斜め上へ伸びる太い線は、途中までは一本の枝に見える。指先でその線をたどると、葉のない区間を通り、別の枝の下へ入り込んだ。
右へ一歩ずれる。さっき幹へつながっていた斜めの線が左へ離れ、間に青空が細く開いた。枝だと思った線は若木を支える棒で、幹とは低い位置で結ばれている。見上げた角度では、その結び目が建物の縁に隠れていた。
立ち位置を元へ戻すと、空の隙間は狭まり、支柱がもう一度幹へ重なる。二本が接して見える地点は、木にも棒にも印がない。こちらの目と二本の線が一直線になった場所だけに、仮の分岐が生まれている。
今度は右目を閉じた。支柱は幹の反対側へ少しずれ、さっき枝に見えた線が最初から別物として見える。頭を動かさなくても、使う目を替えるだけで空の隙間が現れた。両目を開けば、二つの像は重なりながら奥行きを取り戻す。
若木へ近づき、指を伸ばせる距離で止まる。幹の表面は細く曲がり、支柱は削られた直線のままだ。触れずに指先を両者の間へ差し入れると、遠くから消えていた空が指一本ぶん残る。その隙間を葉の影が横切り、支柱の側だけすぐ明るさを戻した。