青い文字の水際

脚をつまんでグラスを少し傾けると、青い文字が右下がりになる。黄金色の液面は文字と一緒には傾かず、卓とほぼ平行なまま、最下段の一文字を下から覆った。手首を戻せば、文字だけが水平へ戻る。
器に印刷された線は、ガラスの向きに従う。中身の表面は器の内側に触れながら、重力に対して自分の水平を保つ。どちらも同じ手で傾けたはずなのに、一方は手首とともに回り、もう一方は形を変えてその場へ残ろうとした。
今度は口元へ近づけながら、ゆっくり角度を増やす。液面の端が青い文字の下を左から右へ進み、縦棒を短くし、丸い部分を半分に切った。文字は読めなくなるのではなく、液体の中へ入った部分だけ太く見える。境目を越えた同じ線が、空気側と液体側でわずかにずれていた。
一口飲む。グラスの角度は同じでも、液面の位置だけが少し低い。さっきまで沈んでいた線が空気側へ戻り、青さは細くなる。飲んだ量は口へ移ったが、その変化を先に示したのは味や重さではなく、文字の途中を移動する境目だった。
グラスを卓へ戻す。青い文字と液面は再び平行になったが、最初と同じ高さでは交わらない。外側の結露を指で一筋拭うと、透明になった細い場所だけ、液面の縁を途切れずに見通せる。そこへ新しい滴が下り、水平な線を縦に横切った。