指一本ぶんの切断

画面を両手で持ち上げ、キーボードの支えから指一本ぶん離した。机に残ったキーを右手で一つ押す。薄い音と手応えは返ったが、入力欄のカーソルは動かない。その代わり、画面の下から別のキー列がせり上がった。
同じ文字が、机の上にもガラスの中にも並んでいる。下のキーは押せば沈むのに、文字を送らない。画面側は沈まないまま、触れた場所の色だけを短く変え、一文字を入力欄へ置いた。形は似ていても、指へ返す合図は反対になる。
離れた距離はわずかで、画面と台の間から机が細く見えるだけだ。それでも、その隙間を境に入力を受け取る面が切り替わった。机のキーから機能が抜けたのではない。画面とのつながりがなくなったため、押したことを渡す相手だけがいなくなっている。
画面を支えの方へ運ぶ。縁が触れる直前までは、ガラスのキー列が残った。さらに押し込むと列は下へ消え、入力欄がその分だけ縦に広がる。机の同じキーを押せば、今度は音に続いて一文字が現れた。接続は見えないが、画面から消えた列が合図になる。
もう一度、上端を手前へ引いた。支えから離れる瞬間、入力しかけた文字は欄に残り、机のキーだけが黙る。画面の下端には、最初の一列がまだ半分しか現れていない。そこへ親指を置くと、完全に開く前の一文字だけが先に濃くなった。