中央だけの待ち時間

折れた一枚を箸で持ち上げ、その形のまま湯へ沈めた。外側はすぐ淡い色へ変わり、縁が縮んで箸の先へ寄る。二つ折りの内側だけは見えない。表と裏を返せば一枚全体へ湯が触れたように思えた。
箸先で折り目を開く。重なっていた面には赤さが残り、中央を横切る細い線になった。湯に入っていた時間は外側と同じでも、そこへ湯が直接届いた時間はほとんどない。一枚を鍋へ入れたという動作と、一枚の各面が加熱されたことは一致していなかった。
開いた肉をもう一度沈めると、赤い線は端から薄くなる。今度は全面が湯へ触れているはずだが、折り目には厚みがあり、平らな場所より遅れて色が変わった。面が開いても、畳まれていた時間は肉の形に残っている。
どこまで色が変われば一枚を引き上げるのか。外側だけなら最初から十分に見え、折り目だけならまだ待ちたい。箸で肉を広げている間にも、薄い端は縮み続ける。全体を同じ状態へそろえようとすれば、先に湯へ触れた部分はその分だけ先へ進んでしまう。
赤い線が消える直前に引き上げた。皿へ置くと折り目はまた自然に閉じ、どこが最後まで内側だったのか見えなくなる。箸で端を少し持ち上げると、隠れた一本からだけ湯気が細く出た。