留め金の向こうの布

細長い布を管へ一周させ、両端を左右の手で持った。右手を引くと布の輪が金属を滑り、湿った部分だけ色が濃くなる。腕一本ぶん進んだところで輪が急に動かなくなり、左の指へ布の端が食い込んだ。
輪の内側に固定金具が挟まっている。布を強く引けば金具の手前までは寄るが、その先へは通らない。緩めて反対へ引くと、拭き取った水が管の下側へ細い筋を残し、布だけが来た方向へ戻った。
右手の端を離し、左手で布を引き抜く。輪をほどいた途端、隠れていた管の冷たさが指先へ戻る。金具を越えるのは布ではなく、持っている手の方だった。一歩ずれて向こう側へ端を回し、もう一度両手で受け取る。
掛け直した輪を引くと、最初の数センチだけ布が軽かった。固定金具の裏側は拭けておらず、そこへ届いたところで手応えが重くなる。左右へ二度動かすと水の筋が途切れ、金具の両側にあった濡れた面が一つにつながった。それでも金具と管が触れる細い隙間には布が入らない。
二本目の管へ布を移す。今度は金具の少し前で止め、自分から先に一歩ずれた。布をほどくと、輪だった部分が真っ直ぐ垂れ、端から一滴落ちる。掛け直す前に、その一滴だけが固定金具の下をくぐって向こう側へ流れた。