声の戻るねじ山

画面が四角い色の集まりで止まり、少し遅れて声も途切れた。受像機の裏へ手を回すと、同軸ケーブルのねじ環が指先で半回転ほど動く。押し込んだままにすると声だけが短く戻った。
親指と人差し指で環をつまみ、右へ少し回す。環は軽く進んだが、ケーブル本体まで同じ向きへねじれて手首を押し返した。そこで手を離すと声は続いたものの、画面の右半分には大きな四角が残り、動いた人物らしい輪郭がその中で途切れている。
環から手を離してケーブルのねじれだけを戻し、端子を奥へ押しながら続きを締めた。一周目は軽く、二周目で指の腹へ細かな刻みが食い込む。声の末尾が欠けなくなり、画面の四角も上から順に細かくなった。音と像は同じ線を通ってきたはずなのに、戻る時点はそろわない。
さらに締めればよいのか、今の位置で止めるべきか迷う。環へ指を置くだけで画面が一度揺れたため、力を加えずに待った。動く部分は左から右へ広がり、最後まで止まっていた下端の帯も少し遅れて流れ始める。
環をもう三分の一だけ回し、指を離した。声は切れず、画面にも四角は戻らない。端子の金属へ預けていた指先には丸い冷たさが残る。手を表へ戻した瞬間、画面の隅に一つだけ現れた小さな四角が、隣の色へほどけて消えた。