或る世界

二度目の低い震え

空の軌道を車輪音だけが先へ曲がる

右側の建物の裏から、低い車輪音がせり上がってきた。顔を向けても、色のついた軌道が屋根の上へ短く出ているだけで、動く車体は見えない。音だけが曲線に沿うように右から左へ進んだ。

目でたどれる軌道は途中で壁に隠れ、少し高い場所からまた現れる。見えない部分にも二本の線が続いているはずだが、曲がり方までは分からない。車輪音が高くなるたび、その音を線の現在位置へ置こうとした。

ところが、音は屋根の端まで来たあと、同じ場所でしばらく膨らんだ。車輪が継ぎ目を続けて越えたのか、短い車体の前後が別々に鳴ったのかを見分けられない。軌道は進む先を示していても、音の切れ目までは描いていなかった。

音が急に細くなり、今度は建物の左側へ下がっていく。見える軌道の傾きと同じ方向だったので、そこだけは車体の動きを追えた気がする。しかし姿がないままでは、速さも車両の長さも、音の切れ目から想像するほかなかった。

しばらくして音が途切れる。空の軌道を見ていると、屋根の右下から別の低い震えが始まった。さっきの車体が一周したのか、次の車体なのかは分からない。音は同じ曲線を登りながら、最初より少し早く高くなった。