靴までの半歩

木陰を出る半歩前、額だけが熱くなった。足もとはまだ冷えた舗装にあり、胸にも木の葉を通った風が触れている。顔を上げたわけではないのに、左の瞼が先に細く閉じた。
光は正面からではなく、枝の下を斜めに抜けてきたらしい。爪先を動かさずに首だけ前へ出すと、閉じた瞼の内側が赤くなり、顎を引けば暗さが戻る。額に残る熱を動かさないまま、顔だけで日向と木陰を往復できる幅だった。
右足を半歩進める。光の境目は靴より先に膝を越え、胸へ上がった。衣服の色は変わって見えるのに、布の内側が温まるまでには少し間がある。日向に入ったと決めるのは、目が眩んだときか、皮膚が熱を受け取ったときか、それとも両足の影が背後へそろったときだろう。
左足も前へ運ぶと、踵の後ろに残っていた暗さが切れた。全身が明るい側へ出たはずなのに、右手の甲には一枚の葉の影が乗っている。指を開くと、その小さな木陰は人差し指と中指の間で二つに分かれ、腕を下ろすより先に手首の外へ滑った。