或る世界

炎の裏の玉葱

見えない間にも細い一本は油の上を動く

肉の脇にある玉葱を一本だけ決め、曲がった先を目で追っていた。先端は鉄板の縁へ向き、反対側は肉の下へ少し入っている。そこへ炎が上がり、白い一本も鉄板の黒さもまとめて見えなくなった。

顔を少し引く。火の向こうを覗こうとしても、橙色の薄い部分が次々に重なり、さっきの隙間まで目が届かない。位置を覚えているものなら、見えなくても同じ場所にあるつもりで待てた。

炎が二つに割れ、中央だけが低くなる。最初に見えたのは玉葱の先端ではなく、肉の焦げた縁だ。さらに火が縮むと、探していた一本は元の隙間から指二本ぶん離れ、丸い鉄板の外側へ沿っていた。

触れていないのに動いたのか、炎の前から別の一本を見ていたのかは分からない。油の細かな泡が玉葱の下で弾けるたび、先端はほんの少し横へ振れる。目印にした一本そのものが、待っている間の目印にはならなかった。

箸を伸ばしかけ、手は途中で止まる。元の隙間へ戻しても、それが最初の一本だった証拠にはならない。油の泡が一つ大きく弾け、外側にいた一本は肉の下へ半分入った。その直後、最初に覚えた隙間から別の白い先端が現れる。どちらを追っていたのか決めないまま、炎の消えた鉄板に二本が残った。