折り返しの同じ窓

踊り場で右手を手すりから離し、身体を半回転させる。今まで左肩の先にあった月が、次の段へ足を置くと右側のガラスへ移っていた。月は動かず、向きを返した身体だけが窓の反対側を受け取る。
一つ目の階段では、高い塔へ向かって上がった。折り返したあとの階段では、その塔を背中へ置いて進む。足もとはどちらも上へ続くのに、目の前の夜景だけは一階ごとに前方と後方を入れ替える。
二つ目の踊り場で振り向くと、月はまた左へ戻った。ただし前と同じ窓枠ではない。さっきより一段高い横桟の上にあり、雲の暗い縁が下側へ重なっていた。同じ向きへ戻ったつもりでも、高さの分だけ最初の眺めから外れている。
階段は、右へ進んだ距離を次の一階で左へ戻す。横から見れば、身体は細いガラスの箱の中を往復しているだけに見えるかもしれない。それでも踊り場を一つ越えるたび、道路の信号は下がり、月に近い窓枠は上へ移った。
もう一度折り返す。右手で反対側の手すりを取り、三段上がったところで立ち止まった。月は右の縦枠に半分隠れ、身体を少し左へ傾けると丸く戻る。次の段へ足を置いた瞬間、白い円は枠の裏へ消え、下の道路から車の光だけがガラスを短く上った。