緑の側だけ短い

右足を人工芝へ踏み入れた瞬間、爪先が思った場所より手前で止まった。左足はまだ硬い舗装にあり、踵から前へ滑らかに体重が移る。腰だけが右へ少し先に回った。
二つの面の境目をまたぐのではなく、その線に沿って歩いてみる。右足は緑、左足は白い舗装へ置く。同じだけ前へ出したつもりでも、右の靴裏は毛足に捕まり、左の爪先が半足ぶん先へ伸びる。
次の一歩では右膝を少し高く上げた。着地した足は滑らず、その場で膝を受け止める。反対側では左の踵が乾いた音を立て、体重を前へ送った。同じ腰から伸びる二本の脚が、別々の速さで歩いている。
数歩先で向きを変え、今度は左足を人工芝へ置いた。短くなる側も左へ移る。脚の癖ではなく足元の面が歩幅を選んでいると分かっても、身体は毎回、遅れた側を腰のひねりで追いつかせようとした。
両足を人工芝へ移すと、左右の爪先はまた並んだ。その代わり歩幅は、舗装だけを歩いていたときより少し狭い。緑の端まで進み、右足だけを白い面へ戻す。靴底が急に前へ出て、踵は境目の細い線を越えたところで一度鳴った。