右向きを持ったまま

頭上の矢印を過ぎるところで、右足だけを横へ向けた。上半身も続けて回す。けれど右側にあるのは壁で、身体はまだ市松模様の通路を前へ進むしかなかった。
矢印は、今いる一点から右へ動けと言っているのではないらしい。曲がれる場所がまだ先にあるなら、ここで受け取るのは動作ではなく向きだけだ。足は前へ運びながら、次に開く横道を右側に探す。
右を意識すると、まっすぐな通路の見え方が少し変わった。床の縦目地は正面へ伸びているのに、右肩が壁へ近く感じられる。左足から踏み出すたび、身体は正面へ戻ろうとし、視線だけが右の壁際を先にたどった。
右手の親指を掌へ折り、緑の升目を踏むたび一度押す。三升目では壁の文字へ目を取られ、身体ごと前へ戻る。六升目で親指を開くと、その少し先で壁の端が見えた。
壁が途切れたところで右へ曲がる。右足は床の淡い一升を斜めにまたぎ、左足が新しい通路の目地へそろった。振り返ると、さっきまで前方だった市松模様は横へ流れ、頭上の矢印だけがこちらと同じ向きを保っている。