膝裏の静けさ

風へ背を向け、足を肩幅に開いた。脛の後ろにある細い草だけが揺れを止め、左右の草は同じ向きへ伏せている。身体が受けた風の幅が、足元へ細長い静けさとして落ちた。
右足を半歩ずらすと、止まっていた一本が急に左へ傾く。代わりに新しい一本が踵の後ろで起き上がる。風を止めたのではなく、届かない場所が身体と一緒に移っていく。
腰を落とす。肩の脇で揺れていた銀色の穂が頭上へ出て、遮るものを失った低い草には風が戻る。立っているときは膝まであった静かな帯が、しゃがむにつれて踵の高さへ縮んだ。
両腕を横へ広げてみる。肘の後ろでは白い穂先が一瞬止まるが、腕の下を抜けた風が腹の後ろで合わさり、シャツの裾を前へ押した。身体の輪郭どおりに無風の穴が残るわけではない。
腕を下ろして立ち上がる。膝裏の草がもう一度止まり、その向こうでは黒紫の丸い穂が風の中へ残った。足を閉じると、二本の脚の間を細い風が抜け、止まっていた草の先だけがこちらへ倒れる。