或る世界

地上が上がる階段

足裏の低さへ地上の像が重なってくる

一段降りると、左のガラスに映った舗道が膝まで上がってきた。もう一段では腰の高さへ来る。足は地下へ向かっているのに、地上の四角い敷石だけが身体を追い越し、肩の脇から上へ抜けていく。

立ち止まれば、舗道も止まる。手すりを握ったまま上体を少し沈めると、足を動かしていないのに、外の植え込みと建物の柱が一緒に持ち上がった。段差を踏む足と、ガラスへ映る高さを決める目は、別々に地下へ近づいている。

入口の灯りは、その動きに加わらなかった。天井に並ぶ小さな電球は、こちらが一段降りても同じ場所に留まる。地上の青さが上へ逃げるほど、低いところの橙色は明るくなり、二つの景色の境目だけが胸元を横切った。

一段だけ戻ってみる。舗道は胸から腹へ下がり、橙色の電球が二つ、青い反射の外へ出た。同じ段をもう一度降りると、敷石の目地が電球を横切る。実際には離れている二つが、どちらも退かず同じガラス面を占めた。

最後の一段へ足を下ろす前に、手すりから指を離す。ガラスの舗道は頭上まで上がり、敷石の線が天井の灯りを斜めに切っている。足裏が低い床へ触れると、背中側から来た白い光が一度だけ靴先へ落ちた。