或る世界

割れ目が避けた一片

指で選んだ線から裂け目だけが横へ外れる

表面の亀裂へ人差し指の爪を置き、その線を挟むように両手で持った。親指を裏へ回してゆっくり曲げると、乾いた音が一度鳴る。爪の下から始まった裂け目は、濃いチョコレート片の手前で横へ曲がった。

表から見えていた亀裂は、その片の縁までまっすぐ続いている。けれど裏側では、割れた面が片の下を通らず、薄い生地の方へ抜けていた。両手を離すと、クッキーはまだ一枚のままで、横へ逸れた裂け目だけが少し開いている。

今度は線の続きを押さえず、開いた隙間へ親指の腹を入れた。左右へ引くのではなく、片方を手前、もう片方を奥へひねる。裂け目はさっき曲がった場所から再び進み、チョコレート片の外周を半分ほど回った。

最後に残るのは、二つの生地をまたぐ濃い一片だ。強く広げると生地より先にその中央が折れ、低い音が指へ伝わる。二片になったクッキーの両方へ、割れたチョコレートの艶が残った。

小さい方は紙の上へ戻す。大きい方の断面から細かな屑が落ち、最初に爪を置いた線の脇へ集まる。表面の亀裂は紙の上でもまだ見えるが、実際の断面はその途中から外れ、濃い一片の丸みに沿って終わっていた。