或る世界

2021年8月

  1. 上昇は窓の外から先に始まる感覚

    屋根が下がる一席

  2. 静止は細い索を遅れて降りてくる

    止まった後の半往復

  3. 表面より先に指の腹へ水が届いている

    黒い輪の内側

  4. 同じ場面の外側が紙ごとに入れ替わる

    角を合わせると花がずれる

  5. 下からたどると等号は反対向きに開く

    等号を逆に渡る

  6. 触れた壁だけが影の移動を覚えている

    指先を置いたまま葉が逃げる

  7. 空白には訂正した場所が見つからない

    二本線の下の数字

  8. 閉じた丸みには内側の熱が残っている

    湯気の片側

  9. 払ったものの中に元の輪郭が混じる

    刷毛の先の一片

  10. 通路を開くと肘掛けは卓から離れる

    卓を外れた肘掛け

  11. 切り分けた面が輪ごとの置き場所を持つ

    一枚だった三つの輪

  12. 印刷された数は中身の増減を追いかけない

    五個目の外側

  13. 先に動いた脚へ別方向の許可が届く

    赤い人の手前

  14. 回る一枚が重なった瞬間だけ数から消える

    支柱の中の一枚

  15. 同じ一枚の片方だけが飾りに加わる

    先に食べた半分

  16. 指が離れた折れ目にも一羽は続いている

    膝頭で割れた梟

  17. 鉤を離れた房が掌の高さを決める

    肘の内側の一本線

  18. 遮った白さに花弁の重なりが戻る

    指の影を五本置く

  19. 一本を引くと離れた袋が丸く戻る

    結び目から遠い緩み

  20. 抜けた力を三つの支えが順に受ける

    机へ渡る三回

  21. 手を近づけた瞬間に輪郭が消える

    折り目の向こうの赤