結び目から遠い緩み

後ろの荷を束ねた紐の結び目へ指を入れ、輪を一つぶん引いた。手前の線はすぐ硬くなったのに、積み重なった袋の向こう側では、紐がまだ指二本ぶん浮いている。一本の続いた線なのに、張りは同じ速さで届かない。
結び目から順に指でたどった。紐は袋の丸い角で曲がり、別の紐と交差し、荷台の下へ入っている。角を一つ越えるたび、引いた力の一部がそこで止まり、次の区間には緩みが残った。強く引けば全体が一度に締まると思っていたが、紐の通り道はいくつもの曲がりを持つ。
いったん結び目を緩め、浮いた区間を手で手前へ送った。袋の表面がへこみ、隣の袋は押し出されて丸くなる。緩みを一つ消すと、別の場所に短い輪ができた。形の変わる荷では、紐だけをまっすぐにすることができない。
上の袋を掌で押さえ、交差した紐を一本ずつ引く。手前、横、荷台の下という順で余りを結び目へ集めた。最後に輪を作って結び、それぞれの区間を指ではじく。短いところは高く、袋を大きく回るところは低く鳴り、張った紐にも別々の音が残った。
自転車を半歩ぶん前へ押す。後輪が回ると上の袋がわずかに沈み、さっき張った横の紐へ新しい緩みが生まれた。結び目には触れず、その小さな弧だけを指で一度はじく。紐は袋へ戻り、今度は低い音で止まった。