肘の内側の一本線

吊られたバナナの房へ右手を伸ばし、いちばん下の実を掌で受けた。少し持ち上げても、房は天井近くの鉤に残ったままで、指には表面の硬さしか返ってこない。左手を茎の結び目へ運ぶ。
紐を緩める前に、右肘を腹へ寄せた。房の下側は腕より広く、端の実が袖へ触れている。掌を上へ押しているあいだ、鉤は重さの大部分を受けたままだ。右腕だけが、まだ来ていない重さに備えて固くなった。
左手で紐の輪を鉤から持ち上げる。輪が金属の先を越えた途端、房が指一本ぶん沈んだ。右の掌から肘の内側まで重さが一度に広がり、肩が前へ引かれる。下の実は遅れて揺れ、隣の房へ一度だけ触れた。
茎を左手で握り直し、房を胸の前へ抱える。吊られていたときは縦に長かった形が、腕に載せると斜めへ傾き、いくつかの実が互いの隙間へ収まった。通路へ向き直るたび、下端だけが小さく振れる。
低い台へ房を下ろすと、右腕が急に軽くなった。袖をまくると、前腕に一本の赤い線が残っている。外した紐の輪をその脇へ置いても、細い跡だけは肘の内側でしばらく消えなかった。