或る世界

湯気の片側

閉じた丸みには内側の熱が残っている

左の丸みにフォークを刺し、ナイフを中央へ入れた。焼けた表面を越えたところで手応えが軽くなり、刃の両側がゆっくり離れる。開いた切り口へ手の甲を近づけると、見えない熱が一度だけ指の付け根を撫でた。

切る前は同じ形で並んでいた二つのうち、片方にだけ内側が見える。濃いソースが上から流れ込み、断面の細かな隙間へ沈んだ。右の一つは丸いまま光っていて、どこに熱が残っているのか外からは分からない。

切った一片を口へ運ぶ。表面のソースはすぐ舌へ触れたのに、噛むと中心からもう一段高い温度が現れ、息を細く吸った。残した半分は、皿へ伏せた切り口から湯気を逃がしている。次の一口を待つ間にも、濡れた断面の光が少しずつ鈍くなった。

手の甲を、切った方と丸い方の上へ交互にかざす。開いた面からはまだ熱が届く。丸い方は指を近づけても同じほど温かく感じず、表面の下に残る熱を外から比べることはできなかった。そこへナイフを下ろす。新しい切り口から細い湯気が上がり、隣では最初に切った面のソースが皿へ一滴落ちた。