指先を置いたまま葉が逃げる

葉の形をした影の先へ、人差し指を置いた。指の腹には壁の細かな凹凸が当たり、爪の横まで白い粉がわずかに付く。暗い葉に触れているように見えても、返ってくるのは壁の硬さだけだった。
反対の手で鉢らしい物を少し回す。影の葉先が指の下から左へ滑り、指だけが明るい壁に残った。動いたものへ触れ直そうと、指を横へずらす。今度も同じざらつきが続き、影の輪郭を越えた瞬間に感触が変わることはない。
影の中と外では、指先の温度もほとんど同じだった。目を閉じれば、どちら側にいるのか分からない。影は壁を暗く分けているのに、触覚へ渡せる境目を持っていなかった。
もう一度鉢を戻すと、葉先は指へ近づいてくる。そこで指を止めた。黒い縁が爪の半分を覆い、さらに進んで指全体を通り過ぎる。影に触るつもりだった手が、今度は影の通り道を塞がずに立っていた。
指を壁から離す。そこには丸い指の影が新しく加わり、葉影の端と短く重なった。手を下ろすと丸い影だけが消え、植物らしい葉は元の場所より少し左で揺れている。