或る世界

等号を逆に渡る

下からたどると等号は反対向きに開く

答えの右端へペン先を置き、最後の等号を左へ渡った。そこから一つ上の行へ戻り、分数の横に並ぶ項を指で数える。式を書いたときは上から下へ進んだのに、確かめる手は紙の下から上へ登っていく。

等号そのものには、矢印のような向きがない。左と右が同じだと示すだけなら、どちらから渡ってもよいはずだ。それでもノートの上では、左辺から右辺へ、上の行から下の行へという道筋ができていた。答えは道の終点に置かれている。

逆向きにたどると、途中の一行で指が止まった。下の式にある項の数と、その上から運んできた数が合わない。書き進めたときには長い式の中へ紛れた空所が、戻るときには道が一本途切れた場所として現れた。

欄外へ小さな印を付け、もう一度、今度は上から計算する。抜けていた一項を足すと、それより下の数字も書き替える必要が生じた。等号は同じままなのに、その先へ置いた答えだけが順番に動いていく。

最後の行を消し、新しい数字を書いた。ペンを置く前に、今度は答えから二行だけ戻る。二つの等号を右から左へ越えても項の数は変わらない。三つ目へ進もうとして、ペン先を紙から浮かせた。