或る世界

黒い輪の内側

表面より先に指の腹へ水が届いている

鉢の縁へ水を細く注ぐと、土の色が弧に沿って黒くなった。流れを一周させても、茎の周りには乾いた色が残る。外側の黒い輪だけが太くなり、内側の明るい円を少しずつ狭めていった。

水が茎まで届いたかを、どこで決めればよいのだろう。表面だけを見れば、まだ距離がある。けれど黒いところへもう一度注ぐと、水は横へ広がる前に土の中へ消えた。見えている輪郭より下では、別の速さで内側へ進んでいるかもしれない。

茎から指二本ぶん離れた場所へ、人差し指の先を差し込んだ。表面はさらりとしていたが、爪の半分ほど沈めたところで土が指の腹へまとわりつく。冷たさもある。水は乾いた円の下へ、先に入り込んでいた。

それでも、根がどこまで伸びているかは見えない。湿った土へ触れたことと、必要な場所へ水が届いたことは同じではないはずだ。もう少し注げば確かめられるようにも思えたが、量を増やしても、見えない根の位置が分かるわけではない。

指を抜くと、細い穴の底だけが黒く光った。周りの乾いた土を指先で寄せる。穴は埋まったものの、その場所には小さな窪みが残り、輪の外側から水が一本だけ流れ込んできた。茎へ着く前に、窪みの中で土へ吸われていく。