止まった後の半往復

黒い吊り具が右へ動き、いちばん遠いところで一瞬ためらってから戻ってきた。赤白の長いブームはもう動いていない。先端から下がる細い索だけが斜めになり、その下端を空の上で小さく往復させている。
次に右へ振れた幅は、建物の窓一枚ぶんほど短く見えた。左へ戻るときにも同じだけ狭まると思う。けれど吊り具は予想した位置を少し越えた。風が押したのか、索のねじれがほどけたのかは分からない。動きの理由は見えなくても、止まりきっていないことだけは黒い点の位置で分かる。
右、左、右と、黒い点が向きを変えるたびに胸の中で数えた。折り返しまでの時間は短くならず、横へ動く距離だけが減っていく。三度目からは目玉を動かさず、建物の縦線を正面に置いたまま、点が視界の端へ入っては戻るのを待つ。
何度目かの往復で、黒い点は窓枠の縦線に重なった。そこで止まったように見え、首を下ろしかける。すると点は縦線の反対側へ指一本ぶん出た。静止を確かめようとするたび、最後の動きは目で決めた境界をわずかに越えていく。
次の往復を待った。索はほとんど垂直で、吊り具も縦線の脇から離れない。それでも目を逸らさずにいると、黒い点が半分だけ右へ出て、ゆっくり線の陰へ戻った。その半往復を見届けて、ようやく首を下ろす。