或る世界

一枚ぶん遠い茎

指先の力が房の奥まで遅れて伝わる

花びらのような薄片を一枚だけ、親指と人差し指で挟んだ。乾いた縁は爪より薄く、力を入れる前から内側へ折れる。ところが指を手前へ動かすと、つまんだ一枚ではなく、房全体が茎の先で傾いた。

指を止めても、奥の薄片が遅れて揺れる。互いの縁が触れ、紙を小さく丸めるような音が二度続いた。どこまでが一枚なのか、重なった淡い面の間へ目を近づけても分からない。

空いた手で、房の根元に近い細い枝を支えた。揺れは収まり、つまんだ薄片の硬さが今度は指へ直接返ってくる。少し曲げると縁が白く折れ、指の腹へ細かな粉が付いた。枝から手を離せば、房はまた一度大きく揺れる。

爪先へもう少し力を足す。一枚の中央に走る筋は残り、その脇だけが細く裂けた。切れ端は落ちず、隣の薄片へ引っ掛かる。離そうとして指を横へずらすほど、房の別の場所まで細かく震えた。

指を開くと、房はゆっくり元の向きへ戻る。裂けた端だけが爪の溝に残っていた。息を吹きかけると薄片は指から離れ、落ちる途中で房の縁へ一度当たり、さっきより軽く鳴る。