或る世界

岸壁のあとの目盛り

残りの距離が黒い厚みへ移っていく

船が岸へ寄る速さは、止まって見えるほど遅くなっていた。船腹に並ぶ黒い輪の一つが岸壁へ触れる。丸かった外側が少し平らになっても、船はまだこちらへ近づいてきた。

岸との隙間はもう見えない。代わりに、黒い輪の厚みが縮んでいく。船体の白い面を岸壁の錆びた筋と見比べると、触れた後にもほんの少し近づいたように見える。

さっきまでは、水の見える幅が残りの距離だった。幅がなくなると、今度は輪の丸みが目盛りになる。岸へ着いた後にも船が近づいた分は、二つの物の間ではなく、黒い厚みの内側へ移っていた。

輪がどれほど潰れたのか知るには、触れる前の丸さを覚えていなければならない。私は隣の、まだ岸壁から少し離れた輪と見比べた。片方は円に見え、もう片方は接したところだけ直線になっている。隙間を測っていた目は、いつの間にか同じ輪郭の差を測っていた。

しばらくして船体がわずかに沖側へ戻る。平らだった縁に丸みが戻り、岸壁との間へ細い光が一本入った。その隙間はすぐ水の揺れに閉じられてしまう。今度は船が動いたことがはっきり分かった。