或る世界

親指の右から戻る光

隠した場所は目を替えるたび反対側へ開く

左目を閉じ、腕を伸ばした親指で雲の明るい切れ目を隠した。爪の縁から光が漏れないところまで、手首を少しずつ右へ動かす。暗い雲だけが指の両側へ続いた。

手を止めたまま、今度は左目を開いて右目を閉じる。隠したはずの光が、親指の右側へ丸ごと戻っていた。雲も親指も動いていないのに、見る目を替えただけで、指一本ぶんの空が横へずれる。

右目の位置から光を隠し直す。手首を左へ戻し、明るさが爪の裏へ収まるところで止める。そこでまた左目に替えると、光は今度、親指の左から現れた。片方の目に合う場所は、もう片方には空いている。

二つの目で同時に見ると、親指の輪郭が薄く二重になった。遠い雲へ焦点を置いているあいだ、近い指は一本の壁にならない。二つの輪郭のあいだに明るい空が細く残り、どちらの目を閉じても、その線は片側へ逃げる。

指を近づけ、掌まで広げれば、両目から光を隠せた。ただし雲の切れ目だけでなく、その上へ伸びる淡い筋も見えなくなる。腕を下ろすと、二重だった親指が一つに戻り、光は最初より広い場所から目へ入ってきた。