或る世界

半分だけ高い水音

落ち先を外れた水だけが硬い面を鳴らす

石鹸を持ち上げた瞬間、水音が一段高くなった。流れの太さは変わらない。さっきまで丸い面に受け止められていた水が、今度は白い洗面器を直接たたいている。

濡れた石鹸を両手で挟み、また水の真下へ差し入れた。高い音は消え、掌の間から低い音が返ってくる。水は石鹸の中央で薄く広がり、四方から指の付け根へ逃げていく。握る力を少し緩めると、滑る面が手前へ傾いた。

半分だけ流れから外してみる。水の一部は石鹸に当たり、残りはその脇を通って洗面器へ落ちた。低く濁った音と、細く硬い音が同時に鳴る。境目を目で合わせるより、指を横へ動かし、二つの音が同じ大きさになる場所を探した。

手前へわずかに動かすと、高い音が先に大きくなる。元へ戻しすぎれば、洗面器を打つ音は消え、指の間の低い震えだけが残った。二つを鳴らしておくには、滑ろうとする石鹸を同じ場所で支え続けなければならない。

指を開くと、石鹸は洗面器の底へゆっくり滑っていく。水は丸い面の端に当たり、石鹸をわずかに回す。低い音が一周するたび、脇へこぼれた細い流れが短く高く鳴った。