白い升目まで

卓上の小さな金属器へ手を伸ばし、縁へ触れる寸前で指を止めた。奥の鉄板にも同じ形の器が二つ載っている。そちらの熱が、離れた一つへも移っている気がした。
人差し指ではなく、曲げた指の背を外側へ軽く当てる。冷たい。もう一度触れると、今度は掌で包めるほどの温度だった。縁をつまんで料理の近くへ少し寄せ、まだ赤い升目の中央へ戻す。
熱いかもしれないと思ったのは、金属の色のためではない。鉄板の上にある二つと形が同じだったからだ。三つを一組として見たとき、熱まで共通しているように感じた。指が確かめた冷たさは一つの器にだけ属し、残り二つについては何も教えてくれない。
料理の皿を少し寄せると、卓上の器は鉄板の縁のすぐそばになる。さっき触れたものだと分かっていた。それでも持ち上げようとした手は、また縁の手前で遅くなる。器の温度は変わっていないはずなのに、周囲との距離だけで、先ほどの冷たさが頼りなくなった。
器を赤い升目から隣の白い升目へ移す。鉄板との間に細い白が一本入ると、指は迷わず縁をつまむ。持ち上げた底には、丸い水滴が一つだけ残っていた。