或る世界

噛んだ音は紙の内側

頬のそばの乾いた音が一口を包み直す

持ち上げた途端、包み紙の角が頬の脇で鳴った。パンを噛んだ感触はあったのに、その音は聞こえない。耳のすぐ下で紙がくしゃりと潰れ、一口ぶんの小さな音を覆っていた。

包みを少し下げ、もう一度かじる。今度はパンの柔らかな切れ目と、葉らしい具が歯のあいだで裂ける短い音がした。ところが持ち直そうと指を動かすと、折り重なった紙が続けて鳴り、口の中の音はまた遠くなる。

噛む音は、外から聞くより頭の内側に近い。それでも頬へ紙が触れると、乾いた振動が皮膚から先に届く。何を噛んだかを確かめるはずの音へ、手で握った包装の音が割り込んでくる。口と耳のあいだに、紙一枚ぶんの近道ができたようだった。

頬に当たらないよう紙の角を外側へ折ると、今度は指の下で低く擦れた。音は小さくなったが、消えたわけではない。食べ物を口へ近づけるたび、包みも耳へ近づく。静かに食べようとして手を止めると、具の重みが紙の底へゆっくり沈んだ。

半分ほどで、包み紙を底へ巻き込んだ。頬のそばから乾いた音が消え、噛むたびにパンの潰れる鈍い音が戻る。最後に紙だけを丸めると、最初の一口を隠した音が掌の中でもう一度、大きく鳴った。