船橋は赤い輪へ

赤い輪の中へ船橋が入るところまで、横へ二歩動いた。船は停まったままなのに、白い窓の列が輪の縁を滑り、さっきまで見えていた船首は外へ押し出された。
輪の向こうに船があるのではなく、立つ場所からは船が五つに切り分けられて見える。青には空と船尾、黒には上層の窓、赤には船橋。少し腰を落とせば、緑の内側へ船名の一部が上がってきた。どれも同じ一隻の断片である。
枠は中身を変えない。それでも、どこを内側へ入れるかによって、先に気づく場所を選んでしまう。輪の外にも船体は続いているのに、目は円の中でいったん像を閉じようとする。見切れた先を知っていても、丸い縁はそこを一枚の眺めにしてしまう。
反対へ一歩戻る。船橋は赤から外れ、代わりに白い煙突らしい部分が縁へ近づいた。輪を一つずつ覗く必要はないのだが、足を止めるたび、次の色へ船のどこを渡すかを考えた。
最後に輪から少し離れると、五つの円と客船は再び別々のものになった。船名は輪の外で初めて続けて読める。風で目を細めると、赤い縁だけがもう一度、船橋の端へ重なった。