一滴を連れたまま

もう落ちないだろうと思って手を伸ばすと、ガラスの底から小さな音がした。指を止め、その次を待つ。白い紙の内側は見えても、先端に残った一滴までは見えない。
しばらくして器具の縁へ指を掛ける。持ち上げた途端、先端に透明な丸みが現れた。下の容器と離れても、滴だけは行き先を変えず、まっすぐ底を向いている。
横へ移せば、その動きについてくると思った。ところが手を数センチ動かしても、丸みは先端から離れない。器具と一緒に横へ進みながら、重さを増したように一度だけ伸び、また小さく戻った。
片手で受け皿を近づけようとすると、持ち上げた方の手まで傾きそうになる。落とさないために用意する手が、落ちるきっかけを作ってしまう。私は受け皿を諦め、二つの容器のあいだで腕を止めた。
滴は宙へ落ちず、先端に残ったままである。下へ向く形を保ちながら、器具とともに横へ運ばれていく。置き場所へ着くまで、手首だけを動かさないようにした。
器具の底が机に触れる。指を離してから覗くと、先端の丸みは消えていた。どこで離れたのかは分からない。通ってきた場所を目で戻ると、ガラス容器の縁に小さな濡れ跡が一つ残っていた。