両手のあいだの一口

右の持ち手へ指を入れてから、反対側にも同じ形があることに気づいた。片手だけで持ち上げるのをやめ、左右へ一本ずつ指を掛ける。器の重さが二つに割れ、橙色の液面は中央でかすかに揺れた。
取っ手が一つなら、持つ手と支えない手ができる。二つあると、同じ器へ左右から触れられる。重さが半分になったわけではないのに、片方の指だけが引かれる感じは消えた。その代わり、カップを口へ運ぶと、両肘まで一緒に動く。楽になったのか、動かす場所が増えたのか、すぐには決められない。
熱も同じだった。白い胴へ掌を当てずに済むが、二つの輪から指先へ同じ温度が伝わってくる。一か所へ集中していたものが左右へ分かれると、負担は薄くなる。その一方で、どちらの手も器から離れられない。支える場所が増えることは、自由な手が増えることとは違うらしい。
匙は受け皿の横に置いたままだった。両手で持っているあいだは使えない。ひと口含んで器を戻せば、二本の指は同時にほどけ、今度は右手だけが匙へ向かう。食べ方が変わるたび、必要な手の数も入れ替わった。
匙の先が受け皿へ触れ、小さな音を立てた。もう一度カップへ手を伸ばす。左右の指は同じ輪に入り、今度は液面を揺らさず持ち上げた。