雲の下を進む板

暗い雲の下で、水面を進む人影がいくつも見えた。細い板の上に立ち、一本のパドルらしいものを水へ入れている。対岸の設備らしい影は動かないが、手前の人たちはそれぞれの速さで横へ進んでいた。
空が重いと、動く理由まで薄くなることがある。けれど水の上では、次の一かきがすぐ姿勢に返ってくる。遠くの天気を変えられなくても、板の向きや足の置き方は選べる。小さな調整を続けることが、動かないこととは違う。
仕事でも、先の条件が決まらない時期がある。そのときには、大きな結論を急ぐより、今日できる確認を一つ進める。資料を読み直す、相手に尋ねる、次の作業を分ける。水面の一かきのように目立たないが、姿勢を崩さないためには必要な動きだ。
雲のすき間から、かすかな光が水に落ちた。人影はその明るさへ向かうのではなく、各自の線を保って進んでいた。
重い空を見上げながらも、足元の波は細かく変わっていた。その変化を頼りにしたい。今日も。