小瓶に残る色

小さな透明の瓶に、赤橙色の液体が残っていた。奥には料理らしい皿がぼけているが、目は先に瓶の色へ行く。食卓の中で一番小さいものが、光を受けて一番はっきりしていた。
食事では、主役にならないものが記憶に残ることがある。水の冷たさ、器の手触り、皿の端に残った香り。味そのものは時間とともに薄くなるのに、間に置かれた小さな印象は、あとから急に戻ってくる。
仕事でも、終わったことだけを記録に残しがちだ。だが途中で助けられた言葉や、作業を切り替えたきっかけも、次に同じ場所へ来たときの手がかりになる。大きな成果を並べるほど、目立たない瓶のようなものを一つ覚えておきたい。
瓶の底には、光が丸くたまっていた。飲み終えたあとも、色だけがしばらく食卓に残る。
その小さな明るさを見てから、次の皿へ箸を伸ばした。急いで食卓を片づけなくても、目に留まったものを一つ言葉にすれば、その時間は長く残る。そう感じた。それで十分だと思う。