雨粒の向こうの青

雨粒の向こうに、青い花が一つだけ見えていた。近くの水滴は大きくぼけ、花の輪郭も少し揺れている。それでも青さだけは薄くならず、曇った景色の中で先に目へ届いた。
雨の日は、物事が見えにくくなる。窓の外の距離、道の端、遠くの建物。けれど細部が隠れるから、色や明るさの違いにはかえって気づける。全部をはっきりさせなくても、今どちらへ顔を向ければよいかは分かることがある。
予定が曖昧なときも同じだ。細かな手順を決められないなら、今日は何を大切にするかだけを置いておく。人に返事をする、机の上を空ける、少し休む。その芯があれば、周囲がぼんやりしていても一日を運べる。
水滴が少し下へ流れ、花はまた別の形になった。見え方が変わっても、青い色はそこに残っていた。
窓の向こうを見たまま、しばらく立っていた。急いで視界を拭き取らず、雨粒の間に残る青を数えた。雨は景色を隠すだけでなく、見方を少し遅くしてくれる。そう思ったのだ。