或る世界

雲の縁にいる人影

雲の明るさを見上げる小さな人影

雲の縁が白く光り、その下に人影が立っていた。手前には小さな影もあり、二つの背中は同じ空へ向いている。建物の輪郭は暗く、空だけが遠くまで開いていた。

誰かと景色を見るとき、言葉を交わさなくても共有できるものがある。雲の形が変わる速さ、光が目に入る強さ、風の冷たさ。説明しようとすれば細かく分かれるが、その場ではただ同じ方を見ることが先にある。

日々の会話でも、考えをぴったり一致させようとしなくてよい。相手が見ているものをすぐ理解できなくても、少し同じ時間に留まるだけで、次に聞く言葉が変わる。話す前の沈黙を、何もない時間として急いで埋めないようにしたい。

光は雲の隙間から少しずつ形を変えた。人影は動かず、空の方だけが新しくなっていった。

見上げたあと、足元の道もさっきより明るく見えた。

景色は写真に残せるが、そのときの間までは残りにくい。だからこそ、立ち止まったことを自分の中で覚えておきたい。そう思った。