或る世界

青い雲の下の水面

重い雲の下に静かに広がる青い水面

重い雲の下で、水面だけが細かく動いていた。対岸には建物や低い設備らしい影が並び、空の明るさを受け取らないまま輪郭を保っている。波は同じ場所にとどまらず、岸へ小さな模様を運んできた。

天気が崩れそうなとき、空ばかりを見てしまう。けれど足元の水は、暗くなっても動き方を変えない。見通しが悪い日には、遠くの雲を読み切ろうとするより、今ある仕事を少しずつ進める方が役に立つことがある。

予定がはっきりしない朝には、終わりまで決めなくてよい。連絡を一本返す、机の上を片づける、次に必要なものを用意する。小さな動きは大きな雲を消さないが、待つだけの時間を自分の手に戻してくれる。

水面の色は、青というより灰色に近かった。それでも波の端にはかすかな明るさがあり、岸まで届いては消えた。

雲はまだ低いままだ。けれど、立ち止まるための理由にはならなかった。次の一歩だけを選び、ゆっくり歩いた。波の音が静かに背中を押したと感じた。