網目の向こうの明るさ

網目の入ったガラスに細かな傷が走り、その向こうの光をいくつもの形に分けていた。外には緑があるらしいが、葉の輪郭までは見えない。見えないからこそ、明るさだけが先にこちらへ届いていた。
窓は景色を見せるためのものだと思っていた。けれど完全には見えない窓の前では、目は余計なものを探さなくなる。色の変化や光の濃さだけを受け取り、外が晴れているのか、風があるのかをゆっくり想像する。
人の話も、いつも透明な窓のようには入ってこない。言葉の一部しか聞こえず、背景を知らないまま考えることがある。そのとき、分からないところを勝手に埋めないためには、ガラスの網目を見ているような慎重さが要る。見えていることと、見たいと思ったことを分けておきたい。
傷の隙間で光が白くなった。外の景色を急いで確かめなくても、今日は明るい方へ向かえばよい。
窓の前を離れると、目に残ったのは網目ではなく、向こう側の淡い緑だった。足取りが少し軽くなる気がする。