濡れた車線の矢印

濡れた道路に、白い矢印が何本も並んでいた。街灯の光が水たまりに伸び、車線の境目を少し曖昧にしている。それでも矢印だけは、どちらへ進むかをはっきり指していた。
道順が示されていると、迷いはなくなるように思える。けれど実際には、信号を待つ時間があり、横から入ってくる車があり、足を止めて確かめる場面もある。正しい方向を知ることと、その方向へ気持ちよく進めることは、同じではない。
予定表にも矢印のような役目がある。午前から午後へ、締切から次の作業へ、目を移す場所を教えてくれる。ただし、その通りに動けなかった時間まで失敗に数えると、一日は急に狭くなる。雨の日には少し遅く歩くように、余白を残して進む方が、かえって遠くまで行ける。
遠くの交差点では、赤い光が路面に揺れていた。矢印を頼りにしながらも、今の足元を見て歩く。その二つを一緒に持っていたい。
水の光が消えないうちに、次の角まで進んだ。靴音は静かで軽かった。