水際の明かりを数える

対岸の建物に灯りが入り、丸い光だけがゆっくり回っているように見えた。水面は暗く、岸の色を細くほどいていた。近づけば騒がしいはずの場所が、こちらからは一枚の明るい帯になっている。
夜景を見るとき、人は建物の高さより、灯りの数を先に受け取るのかもしれない。窓ごとに違う時間があり、まだ働いている人も、帰る支度をしている人もいる。それを知らずに眺められる距離が、景色を静かにする。
自分の一日も、少し離れて見れば同じように見えるだろう。細部では予定が崩れたり、言葉を選び直したりしている。それでも夜になれば、できたことと残ったことが小さな光になって並ぶ。全部を同じ明るさにしなくても、暗いところがあるから道筋が分かる。
水の上に反射が揺れた。向こう岸へ渡らず、ただ灯りを数えている時間にも、今日を終える役目がある。
最後の光が目に残り、歩き出す足元はさっきより軽くなった。水辺の風が、急ぐ理由を一つずつほどいてゆく。