鏡の中の売り場

黒い枠が斜めに走り、その隙間に服の売り場がいくつも現れていた。卓上のたたまれた布も、ラックに掛かった袖も、鏡の角度ごとに少しずつ違う位置に置かれている。
一つの店を見ているのに、目は一度に全部を受け取れない。白いブラウスを追えば、次の面には灰色のスカートがあり、その横には空いた床がある。選ぶために並べられたものよりも、見落としていた通路や椅子の方が、先に記憶へ残りやすい。
買い物では、必要なものを決めてから店に入ることが多い。それでも途中で別の色に足を止め、触るつもりのなかった生地の前で考える。予定は役に立つが、視界の端を閉じすぎると、今の自分に合うものを通り過ぎてしまう。
鏡の中では、どの断片も同じ明かりを受けていた。まず一つを見て、次に隣を見る。それだけで、売り場は少し広くなった。
急いで結論を出さず、視線を戻す時間を持てばよい。最初の印象と二度目の印象のあいだに、選択の理由が静かに育つのだと思う。