橋の手前の芝生

広い芝生に置かれた小さな屋根は、遠くの橋より先に目へ入った。海の向こうへ伸びる大きな構造物に比べれば、布一枚の影は頼りない。それでも、座る場所と荷物を寄せる場所があるだけで、広場の中に自分の半径ができる。
旅の途中では、目立つ景色を見に行くことが多い。高い塔、長い橋、名のある建物。その前で立ち止まる時間は確かにうれしいが、記憶に残るのは、少し離れたところで水を飲んだことや、靴を脱いで休んだことだったりする。大きな目的地は向きを与え、小さな場所は身体を落ち着かせる。
どこへ行くかを決めることと、どこで休むかを決めることは別の作業だ。後者を後回しにすると、景色の前まで着いても、目が受け取れるものは少なくなる。行程には、進むためだけでなく、立ち止まれる余地も要る。
橋の上を行くものは遠すぎて見えなかった。芝生の影は、風のたびに少しずつ形を替えた。自分のいるところだけが、午後のあいだ少しずつ小さく動いていた。