或る世界

2021年5月

  1. 揺れる竿の奥で、橋だけが同じ形を保っていた

    揺れを測る線

  2. 花の間からだけ、遠い輪の一部が見えた

    花の向こうの輪

  3. 切り分けた形ごとに、中身の見え方が変わった

    切り口の順番

  4. 花の影が動くたび、壁の前の色が替わった

    壁際の重なり

  5. 日が低くなるほど、白い穂だけが明るく残った

    草地に残る光

  6. 二つのグラスは、同じ盆の上で別の光を受けた

    二つのグラスの間

  7. 布の折り目の間で、丸いものだけが光を返した

    折り目の間の重さ

  8. 大きな船の前で、二つの細い板が進んでいた

    大きな船の前で

  9. 同じ方角を向く二つの背中が、水辺に残っていた

    話さない水辺

  10. 白い壁の端で、背後の高い建物が細くなった

    白い面の奥行き

  11. 二羽の歩幅が、タイルの線を別々にたどった

    タイルの上の二羽

  12. 白い花の間から、淡い桃色の縁だけが現れた

    花束の中の順番

  13. 皿に残る色が、次の一口の順番を替えていった

    残る皿の順番

  14. 細かな形が寄るたび、次の一口が変わった

    混ざり方の途中

  15. 一切れの空きから、丸い菓子に方向が生まれた

    円にできた方向

  16. 馬の歩幅と長い棒が、別々の揺れで前を向いた

    揺れを連れた方向

  17. 暗い雲の間に、夕方の色だけがいくつも残った

    暗さの中の色

  18. 透明な器の縁を越えて、細い茎が外へ伸びた

    器を越える茎

  19. グラスの外へ伸びたスプーンが、次の一口を待った

    スプーンの外側

  20. 小さな違いを集めて、花は一つの青に見えた

    青のまとまり

  21. 花の間からだけ、遠い白い船の輪郭が見えた

    花の奥の白い船

  22. 枝葉の下を通ると、入口は周りを包む形へ替わった

    アーチの内側

  23. まだ来ない重さを待ち受ける二つの鉤

    雲の下の鉤

  24. ひらく前にも残る小さな朝の明るさ

    蕾の明るさ

  25. 木の影を受けて立つ小さな白い居場所

    木立の中の白

  26. 手前の稜線を越えて見える白い頂

    手前の山、その向こう

  27. 濡れた地面にひらく夜の逆さの窓

    水たまりの窓

  28. 食べ始める前に残された卓上の余白

    卓上の余白

  29. たれを選ぶ前に静かに並ぶ皿の色

    混ぜる前の皿

  30. 残り枚数を数えながら静かに持つ重さ

    残り枚数の向こう

  31. 小さな花の上に静かに広がる青い余白

    花の上の青