或る世界

花の上の青

小さな花の上に静かに広がる青い余白

草の間にある小さな白い花を見ていると、空が急に広くなる。足もとでは茎が絡み、花は風のたびに別の方を向く。その上には、何も置かれていない青が続いていた。

予定が詰まると、空白は埋めるべきものに見える。返信をし、次の場所を決め、忘れ物がないかを確かめる。そうして一日を細かく分けていくほど、何もしない時間だけが不安になる。しかし、空いたところがあるから、予定にないものが目に入る。道端の花でも、知らない店の匂いでも、急がなければ通り過ぎていたものが残る。

旅に出れば、毎日が新しい景色で満ちると思っていた。実際には、移動を待つ時間や、目的地を決めない午後の方が、後から強く思い出されることがある。名前の付かない時間は、何も起きなかった時間ではない。次に目を向けるための、余白になっている。

花から視線を上げると、青はまだ少しも狭くなっていなかった。急がなくても、空はいまも変わらずずっと遠くまで大きく広がっている。