或る世界

混ぜる前の皿

たれを選ぶ前に静かに並ぶ皿の色

皿の端に、小さな二つのたれが置かれていた。赤い方を先に試すか、色の濃い方を米へ落とすか。鶏肉やきゅうりはまだ別々に並び、混ぜる前の形を保っている。

知らない料理を前にすると、説明を全部読んでから食べたくなる。何が辛いのか、どの順番が自然なのか、先に分かれば失敗がないように思える。しかし、最初の一口でしか知れないことも多い。少しずつ混ぜ、味が変わるところで手を止める。そのためらいは、食べ方を遅くするだけではない。

旅先では、分からないものを分からないまま受け取る時間がある。看板の言葉も、食卓の作法も、すぐに自分の基準へ置き換えない。確かめられることを確かめ、それでも残る部分は、次の一口や次の会話まで持っておく。理解は、答えを急いで集めることより、手元で少しずつ広がることがある。

箸先で香草を少し取り、米の上へ置いた。皿の中の距離が、そこで初めて動き始めた。まだ選ばなかったたれも、変わらず小皿に残っている。