或る世界

木立の中の白

木の影を受けて立つ小さな白い居場所

木立の奥に、白い幕だけが明るく浮いていた。枝葉の影は絶えず布の上を動き、そこにある形を、落ち着かないまま包んでいる。

屋根と壁があれば、場所はすぐに居場所になると思っていた。けれど、旅先で短く休む場所には、建物の丈夫さとは別のものが要る。荷物を下ろしてよいと思えること、外の気配を聞きながらも、少しだけ気を抜けること。その二つがそろって、はじめて身体が座る場所を見つける。

長く住む家には、傷や癖が積もる。一方で、仮の場所は、こちらが何を持ち込むかによって毎回違う表情になる。読みかけの本、濡れた靴、置き場に迷う上着。そのわずかな配置で、ただの空きが、今夜だけの部屋に近づいていく。帰る先を持ちながら一晩のために場所を整えることは、どちらかを薄くすることではない。短い滞在にも、荷をほどく順番がある。

風がやむと、幕の白さは木々の間で急に静けさを取り戻した。外にいるための内側が、そこに残った。朝にはまた畳まれるかもしれない。