雲の下の鉤

雲の切れ目を待っているあいだ、二基のクレーンは空へ細い線を引いたままだった。吊り鉤はどちらも途中で止まり、地上の仕事だけが、こちらからは見えないところで続いているように思えた。足もとには、建物の姿はまだ現れない。
大きなものを造る現場では、変化はたいてい目につかない。一日で増える高さは少なく、昨日との違いを言い当てようとすると、確かとは言えなくなる。それでも、何も起きていないわけではない。鉄骨の内側で決まる順番や、運ばれてくる資材の数が、次に見える輪郭を用意している。
旅の支度にも、よく似ている。地図を見ている時間だけが準備ではなく、使わないものを戻すこと、連絡を一つ済ませること、迷った品を棚に残すことにも、行き先を狭めずに持ち運ぶための働きがある。終わった印のない作業ほど、途中で手を離す加減が難しい。
風が雲を押すと、二つの腕の黒さが急に濃くなった。まだ何も吊っていない鉤も、次の重さを受けるためにそこにある。