或る世界

花の奥の白い船

花の間からだけ、遠い白い船の輪郭が見えた

桃色の花の向こうに、大きな船らしい白い形が見えた。手前の枝には花が多く、風が触れるたびに遠くの船を隠したり、少しだけ見せたりする。近い花の色は濃く、遠い船の輪郭は空と水の間で薄かった。

遠くにあるものを見るために、手前のものをよけたくなることがある。枝を押さえたり、別の場所へ移ったりすれば、船の形はもっとよく見えるだろう。しかし花の間からしか見えない船には、遠さがそのまま残る。手前の色と葉があるから、白い船は単なる明るい形ではなく、遠いところにあるものとして受け取れる。

花が揺れると、船の窓らしい線が一瞬だけ現れた。次の瞬間には桃色の花びらが前へ戻り、遠くはまた見えなくなる。見通しが途切れるから、こちらは見えた部分を確かめようとする。全部が見えることより、少しずつ現れることの方が、遠いものの大きさを長く考えさせる。

しばらくすると、船は花の奥で動かないまま残った。手前の枝だけが、景色を何度も新しくしていた。