或る世界

揺れを連れた方向

馬の歩幅と長い棒が、別々の揺れで前を向いた

馬の背に乗った人が、長い棒のようなものを斜めに構えていた。衣装は鮮やかで、馬の飾りも風に揺れている。すぐ後ろには船の白い面があり、水辺らしい広い場所に、異なる時代の形が重なって見えた。

馬に乗る人の動きは、歩いているときより遠くからでも分かる。身体の高さが変わり、馬の首が先に進む方向を示し、手に持つものまでが一つの線になる。しかし、その線は自分だけで作られているわけではない。馬の歩幅、手綱の張り、地面の固さが少しずつ向きを決める。目立つ姿勢ほど、多くの支えの上に成り立っている。

馬が一歩進むと、飾りの端が遅れて動いた。手にある長いものは先へ向くが、馬の耳は別の方角を確かめている。進むための意志と、周りを受け取る感覚は、同じ身体の中でも同じ速さではないらしい。

白い船を背にした姿が遠ざかると、残ったのは馬の足が作る短い音だけだった。方向を持つことは、まっすぐ進むことより、いくつもの揺れを連れたまま前へ出ることに近い。